『一科学者からアル・ゴア氏への提言』清水浩/『21世紀の歴史』ジャック・アタリ/『都市この小さな星の』リチャード・ロジャース

ルネサンス以降、世界の変革期は新技術や新大陸の発見とともにあった。
あるいはそれから数十年のずれを持ちながら連動している。


技術は理系側の話だけではなく金融や流通のシステムも含む。


フランス人経済学者ジャック・アタリ氏によれば、
新たな資源やそれを応用する技術が発明されればその時点で世界が塗り替えられるのではなく、
制度が整い人材が充実した場所において技術の産業化が行われ、初めて変革が始まり経済的な世界地図が塗り替わる。


清水氏の著書は技術的な側面にページの多くを割いているが、その前提にはやはりルネサンスから延々と続く
技術史の流れを置いている。
力学、電磁気学量子力学という物理学の3つの分野において発見されて来た技術が産業化されてきた過程を踏まえている。(最終的に21世紀は量子力学の時代(太陽光発電発光ダイオード)だという。)


この観点に立つ時におもしろい話が技術の産業化における3つの障壁の話。
1:魔の川(アイディア→試作品)
2:デスバレー(試作品→商品化)
3:ダーウィンの海(商品化→産業化)


この障壁を乗り越えるためには開発者の努力とともに制度基盤が整っている必要がある。
ゆえに市民の自由を担保できる制度を持った場所で新たな産業が興るし、
発明〜社会・経済の変革のタイムラグ(本文2行目)も発生するのだろう。


変革の中心地にはさらに人や資本が集積し、さらにそれにぶら下がった形で建築も建ちまくる。
今の日本人の多くが東京型の生活様式やファッションから影響を受けるように、
中心地において生まれた建築様式もその時代を代表する文化と捉えられる。


技術→産業→資本→文化(短いタイムスパンで見た際の)


と、制度を一旦置いておいてものすごく単純に見る中で建築がどこにあるか考えてもおもしろい。
コルビュジエはじめ4大巨匠と呼ばれる人たちの建築は世界の景観を塗り替えた。
それはこの図式で見れば技術に根拠を置きながら(近代建築のひとつの原則)、
産業化を考え(グロピウスとか)たところ、つまりけっこう遡って考えてた事が起因していると思えて来る。


一方でOMAやハディッド、ゲーリーなどいま最も多くの仕事をこなし影響力のある人たちはどうだろうか。
ずっと前の新建築にのってたイソザキ氏の評論によれば、
彼らは世界の経済の動きを見て、それに逆らう事無く乗っている、言わば波乗り型の建築家だと言う。
建築家が金の流れを変える事はできない。
ならばそれはそれとして見据えながら波を読む事で多くの仕事を世界に残していく。
建築の場合(主に売れっ子は)仕事が自身の主張と結びつくからそれはそれで積極的な姿勢だとも言えるのだろうか。


さらに建築家は金の流れどころか制度にもコミットできない。
アーバンタスクフォース以降のロジャース卿みたいになれば可能性はあるのかも知れないが、
それにはまだまだ建築家の社会的な信用が足りないかもしれない。(先輩が言ってた。)


しかしそうした中で、ロジャースみたいのとは別に
小さな制度にコミットするという方法も考えられている。(フジムラ氏。後輩が言ってた。)


それから建築家は技術者という側面を持っている。
ロジャースがイギリスに対して発言できたのは技術者兼芸術家という立場からだろう。


以上から趣味ではない建築家として3つの生き方があると思えた。


1:既存制度のすき間を発見し足下から少しずつ世の中を変えていく観察者・発明者としての生き方
2:技術と審美眼を研ぎすまして社会から信用を得る、(古い意味での)建築家としての生き方
3:数多くの仕事をこなせる立場を勝ち取り、作品を通して批評を展開する作家としての生き方


3はある意味巨匠時代の人たちと似てるだろうか。
でも批評がパンチを持っていたのは当時ならではなのでは…建築史わかる人に聞いてみよう。
いずれにしても生半可じゃない。


それにきっと現場にはいろいろあるんだろう。
俺は学生時代に現場を見ていない。
早く働きたい。
以上。


温暖化防止のために 一科学者からアル・ゴア氏への提言

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